BS朝日「いま世界は」で取り上げられた当科の災害時医療活動内容

朝日新聞グローブ掲載

放送された内容: 【放送日:2011年5月15】
■GLOBE企画「漢方」■
日本でも需要が高まっている漢方薬。 しかし、その原料をめぐって日中韓で国際的な争奪戦が繰り広げられています。 その最前線に現場のカメラが入りました。 漢方の原料になる生薬は、第2のレアアースになるかもしれないといわれています。 さらに中国は「中医学」=「中国の漢方」の標準化を狙っています。 日本の漢方の将来は?標準化された場合、どういったことになるのでしょうか?
■ゲスト■
都留悦史(朝日新聞GLOBE編集部記者)・渡辺賢治(慶応義塾大学医学部漢方医学センター准教授)


◇番組でのインタビュー内容◇
Q.)被災地では何回診察を行いましたか?
3月17日から現地での診療に行っています。主に被害のひどかった女川地区や石巻地区へ行って行き、10回の診療で延べ210名の方々を診察し処方を行いました。医療活動だけでなく、当科の鍼灸師や東北大学の医学生も同行してマッサージなどのボランティア活動も行っています。

Q.)どんな症状の方に、何に効く漢方薬を処方しましたか?
症状は様々です。震災直後は雪が降るほど寒く、ほとんどの避難所で電気・ガス・水道が利用できなかったため、多くの方々が暖をとることができませんでした。このため、体が冷えて風邪を引く方や低体温になっている方などがたくさんいました。
震災から2週間ほど経過すると徐々に気温が上がり、暖かくなってきましたが、この時期には津波で運ばれたヘドロや土砂などが乾燥して空気中に広がっていたことと、花粉症の時期が重なっていたため、頑固な咳やのどの痛み、鼻水、眼のかゆみなどの訴えが多かったです。そのほか、水の制限から手を洗うことができないという衛生環境で、下痢や嘔吐の症状も多かったです。
震災から一ヶ月ほど経過する頃には、長い避難所生活によるストレスからか、不眠や苛立ち、不安感などの精神的症状も増えきていました。そのほか、食事が炭水化物に偏りやすいために、便秘の症状を訴える方も増えてきています。

Q.)被災地で診察を行うに際し、何か工夫をされましたか?
できる限り、避難所での生活内容を聞くことにしました。衛生環境や、食事内容、睡眠、運動などの情報は、西洋医学でも東洋医学でも診察の上で重要な情報ですので聞くように心がけていました。

Q.)西洋薬と比べて、漢方薬ならではのメリットはどんな点でしょうか?
漢方薬は2千年以上の歴史があり、現在よく使われるレントゲンや採血検査などがない時代から使用されてきています。漢方では、話を聞き、脈を触り、舌を見て、時にはお腹を障って診断します。
今回の震災直後のようなライフラインが遮断された状況では、ほとんどの診断機器が使用できない状況でしたが、長い歴史で蓄積された漢方の知識や診断技術は逆にこのような状況で役に立ったと思います。
先ほどお話したような、非常に寒く、暖房を使用できないような状況で、さらにゆかの上にダンボールを敷いて休まなければならない状況では、なかなか体を温めるのが難しいというのがありました。
西洋薬には体を温める薬というのはほとんどありませんが、漢方薬には体の冷え症状に対する薬が沢山あります。その中でも内臓を温めたり、腰を温めたり、手足を温めたりと、漢方薬の種類で体のいろいろな場所を暖めることができます。
体全体が冷え切ってしまう低体温の方には、内臓を温める漢方薬と手足を温める漢方薬を一緒に使用することで、効果を高めることができました。
また、鼻水や鼻づまりの症状についても、西洋医学の抗アレルギー剤は症状を軽減しますが、眠くなったり、注意が散漫になったりすることがあります。体質に合った漢方薬を使えば鼻水、鼻づまりの症状が改善するだけでなく、頭もクリアーになるので、外で瓦礫処理を行う方々には非常に有効だったと思います。
大学の診療では、漢方薬だけでなくて、鍼灸やマッサージも外来診療で行っています。避難所を回り、たくさんの方々が体のこりや痛みを訴えていました。ボランティアとして鍼治療とマッサージを行いましたが、痛みやむくみの改善にとてもよかったと思っています。
鍼治療も様々おこないまいしたが、避難所で行うには小さなシール鍼がとても役に立ちました。ツボに張るだけで、痛みが緩和されたり、便通がよくなったりという方々がたくさんいました。

Q.)被災地では今後も漢方が有効な局面が増えるでしょうか?
まだまだ、被災地の空気には細かいホコリが多く、その中で多くの方々が瓦礫撤去を行わなければならないため、呼吸器症状が出やすいと思われます。外での作業は、マスクをつけて行うことになるので、鼻水や鼻づまりの症状があるとマスクをはずす方が多くなってしまいます。それでさらに悪化するわけです。
また、車の運転や重機の作業なども必要と思いますので、症状が改善して作業効率の落ちない漢方薬はまだまだ活躍の場所があるかと思います。そのほか、イライラや不安感、不眠などの精神的症状にもよくききますので、体質に合った漢方薬を使っていただきたいと思います。



Copyright ©  2008  Center for Asian Traditional Medicine Tohoku University Hospital  all rights reserved.